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都市ガス自由化の出だしはイマイチ?

 いよいよ来年の4月から都市ガスの小売り全面自由化が始まりまね。そこに向けて、経済産業省は1日、家庭用の都市ガス販売に新規参入する事業者の事前登録の受け付けを始めました。しかし、1日に申請があったのは関西電力の1社のみで、昨年の電力小売り自由化の際に初日に24社が申請していたことを考えると鈍い出足となりました。

初日の申請は1社のみに

 その中で申請した関西電力は来春のガス小売り全面自由化を見据えているようです。来年4月1日の事業開始予定などを記載した書類を提出したほか、関電は4月に発表した中期経営計画で、ガス事業を積極展開し10年後に販売量を現状の2倍以上となる170万トンへ引き上げる目標を掲げています。この達成に向け、今後は家庭用を含む新たな料金メニューやサービスの検討を進めていく見通しです。
 初日は関電1社のみとなりましたが、一部の大手電力や石油元売りが都市ガス販売の参入を検討しており、今後申請は増える見通しです。経産省は申請内容を審査し、順次登録を認める予定です。

電力自由化の違いはどこに?

 このように電気と都市ガスで自由化の際の勢いに差が出るのはなぜでしょう?

 理由はいくつか考えられますが、中でも供給エリアの大きさと料金設定の傾向は大きく関係していると思われます。家庭用の都市ガスは、大手や地域のガス会社、自治体など約200事業者が担っており、供給区域は導管網が整備された都市部が中心で電気よりもずっと対象エリアが小さいです。

 というのも、それ以外の地域は金属製のボンベで供給されるLPガスが利用されているからです。また、新規参入ガス会社の多くが既存ガス会社の導管を利用することになるため、送電網が全国に整備されている電力と比べ参入が少なくなる見込みです。電力の場合も、電力の小売自由化後、ガス会社がLNGを燃やすなどして自前の発電所で発電した電気も、電力会社の電線網を通じて契約家庭に供給されていました。その場合、ガス会社は電力会社に「託送料」を支払っています。電気の規格は家庭用は電圧100V、交流周波数は50Hz(東日本)、60Hz(西日本)と決まっています。
電気
同様に2017年4月の都市ガスの自由化後は、電力会社は発電用燃料にも使われるLNGを使って自前の設備で都市ガスを製造するが、そのガスはガス会社の導管(ガス管)網を通じて契約家庭に供給されます。その場合、電力会社はガス会社に「託送料」を支払い、都市ガスの規格は一部地域を除いて「13A(発熱量10750キロカロリー/立方メートル)」と決まっています。

具体的にここが違う

このように聞くと、電気も都市ガスも供給のインフラは現状のものを利用し、品質管理は厳しく問われる点でどちらも自由化の条件は同じように見えますが、実際はそうではありません。最大の相違点は最近、電気料金はよく値上げされているが、都市ガス料金は逆に、原料安とともに下がっているという点です。

原料のLNG価格(CIF価格)は、財務省の「貿易統計」によると2014年12月の9万6,500円から2016年5月の3万3,100円まで、およそ3分の1になりました。東京ガスの東京地区標準家庭(月間使用量32立方メートル)の都市ガス料金は「原料費調整制度」で毎月変わっていますが、直近のピークだった2015年4月の6,200円から2016年8月(予定)の4,600円まで25.8%も下がっています。さらに2015年12月には平均0.71%の料金値下げも実施されており、電気よりも厳しい価格競争を強いられています。

プロパンガスの原料費調整制度とは

 また、「国民感情」という点でも、電力会社と都市ガス会社は異なっています。東日本大震災以来、もともと脱原発派ではなくても、電力会社を快く思わない人が増えました。例を挙げるなら、東京電力は福島第一原発の爆発事故、関西電力は度重なる値上げがその要因です。関電の値上げは、震災前の原発依存度が50%前後と高く、原発を停止して火力発電に切り替えると燃料費がはね上がったためで、それも原発がからんでいます。

 電力自由化を機に新電力に切り替えた人の中には、経済的な理由だけでなく、電力会社を快く思っていなかった人も一定数はいた一方で、都市ガスの会社を快く思わない人は、ほとんどいないでしょう。LPガスよりずっと安く、しかも料金は下がっているから特に不満は出てこないはずです。加えて都市ガスの小売自由化では、新規参入業者はコストアップが確実になる「ガス保安義務」を課せられることになりました。

都市ガス自由化が引き起こす電力会社VS都市ガス会社の行方

 また、ガス会社が主催する料理教室に参加して喜んでいる主婦や、最近は男性もいる可能性も考えると、「現状のままでいい」と思っている消費者の心理をくつがえすには、新規参入の「新規ガス業者」は、思い切った料金設定が必要になります。そのため、価格競争や保安義務もあいまって、新規参入会社の参入意欲も高まらないのもうなずけますね。

これからどうなる?都市ガス自由化

とはいっても従来のガス会社もうかうか安心しているわけにもいきません。東京ガスは今秋メドに家庭向けなど都市ガス小売り自由化に向けた戦略を策定します。2017年4月に始まる顧客争奪戦に備え、強みのガス機器販売の営業力を軸に対策を練り、16年4月に始まった電力自由化では新電力最大の顧客数を獲得した一方、来春は本業で防戦体制を敷く模様です。東京電力エナジーパートナー(EP)や日本瓦斯がガス小売りの準備を進めており、東ガスは対抗策を講じるといった展開が予想されます。電力自由化の際と同様に既存会社は新規参入会社に打ち勝つ魅力をだす必要性がありますね。

 

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