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都市ガス自由化の激論。問題が露呈!

ガス

都市ガス市場開放の枠組みが決定

 2016年4月に完全自由化された電力と同様に、都市ガス小売全面自由化の市場開放の枠組みが決定されました。

 2017年4月の都市ガス小売り全面自由化を半年後に控え、経済産業相の諮問機関・ガスシステム改革小委員会が進めてきた制度設計議論がひとまず終了しました。

 しかし、電力と都市ガスでは大きく違うところがあります。それは、都市ガスは電力と違い送電線網のような完全なネットワークで張り巡らされていないというところです。都市ガスの導管は大都市を中心に国土の一部しか敷設されていません。

 そのため、新規参入は首都圏や関西地方のガス導管がすでにある地域に限定されそうな状況で、大都市と地方の格差が大きな問題にあらためて浮上することが予想されます。

電気決定

二重導管規制の緩和で激論

 ガスシステム改革小委員会は、料金規制の撤廃と東京ガス、大阪ガスなどガス大手が持つ導管の担当部門を別会社にする法的な導管分離を決めました。その後、2015年8月から制度の詳細設計に入りました。
 
 経済産業省・資源エネルギー庁が決定事項を発表しています。

 1、 液化天然ガス基地を既存利用業者と同一条件、同一料金で新規参入業者が利用可能とする
 2、 小売り全面自由化後の経過措置料金規制は、都市ガス利用率が50%を下回るなど解除要件を満たしても、特別な事情があれば解除を見送る
 3、 電力会社が強く望んでいたアパートやマンションなど集合住宅への一括供給は認めない
 4、 既存の導管が敷設されている地域で各社が新たに導管を敷く二重導管の規制を緩和する
 5、 導管整備では、天然ガスの利用拡大などを考慮し、計7ルートの費用便益分析を進める

 ガスシステム改革小委員会は市場の開放を進めました。そして、新規参入を促すことを主眼に方針をまとめましたが、一括供給は安全確保の点、経過措置料金規制の解除はガス料金の不当な値上げを防ぐことを考慮して判断されました。

二重導管規制の問題をめぐる2つの業界

 電力会社とガス会社のなかで最も議論が白熱したのは二重導管規制でした。電力会社は新規参入のため大幅な規制緩和を求め、顧客の獲得を狙うのとは逆に、これまでの都市ガスシェアを守りたいガス業界の意見が真っ向から対立し、この会議は紛糾を重ねました。

 二重導管がこれまで規制されてきた理由はなんでしょうか。それは、導管整備済みの首都圏などで新規参入してきた各社が新たに導管を敷いてしまうと、設備投資が過剰になってガス料金が大幅に上がる恐れがあるからです。

 そんななか、電力業界が販売計画しているガスは熱量が調整されていない、発電用の天然ガスです。これらのガスは大手ガス会社が熱量を一定にしているものとは成分が違い、そのため同じ導管では供給できません。

熱量とは?

 電力業界もガス業界も譲る気配は見せませんでした。なぜなら、二重導管規制をどこまで規制緩和するかで、電力業界が都市ガスに参入したあとのシェアが左右されてしまうためです。

電力自由化とガス自由化の相違点と共通点

都市ガスのガス導管は国土の5.7%しかカバーできていない

20年前から推し進められてきた

 1995年から都市ガス小売りの自由化は段階を踏んで進められてきました。

 日本の都市ガス料金は米国の2倍近くに達していて、先進国の中では特に高い料金設定になっています。その理由としては、日本は都市ガスの原料の液化天然ガスをほぼ海外からの輸入に頼っているからです。

 都市ガス全面自由化を推し進めてきた資源エネルギー庁は、市場に健全な競争を導入し、適切な料金設定を設けるという狙いを考えていました。

問題点のあるガス自由化

 既に電力や石油販売、LPガス(液化石油ガス)販売会社などが参入の意思表示をしています。このような面をみると、電力の自由化と同様に本格的な競争時代に突入するようにも見えます。

 しかし、電力と都市ガスでは大きく状況が異なることがあります。

 電力は全国に送電線網が既に整備されているのに対して、都市ガスの導管が敷設されているのは国土全体でたったの5.7%のみです。整備済みの導管網というと、首都圏など大都市部に集中し、東京−名古屋間でさえ導管で結ばれていないのが実情です。

 国内約200の都市ガス会社のうち、4割は外部と導管がつながっていないのが実情です。こうした地域に新規参入するとなると、参入業者はコスト面で大きな負担を背負うことになります。

 都市ガス導管が埋設されていない地域では、新規参入事業者と既存事業者との競争が今すぐ激化するというわけではありません。しかし、首都圏や関西圏ではすでに導管が張り巡らされているのですぐに競争が激化すると予想されます。

 また、地方はもともと人口が少ないうえ、人口減少がみられ、新規参入事業者は参入にためらいを見せるのも無理はないと考えられます。 

都市ガス新規参入企業への壁とは

料金格差が最大3.7倍もある地方と首都圏

 地方は首都圏とのガス料金の差に苦しめられてきました。地方は首都圏に比べて最大3.7倍もガス料金が高くなる場合があります。関東では5000円で済むものが、地方だと1万8500円になってしまう場合があるということです。 

 また、LPガスは1996年に小売りが完全自由化されました。LPガスの場合でも、三大都市圏を抱える関東、近畿、中部・北陸地区の料金が全国平均を下回るのに対し、北海道、東北、中国・四国、九州・沖縄地区は全国平均を上回っています。

 都市ガス自由化により、首都圏や京阪神で新規参入業者が相次ぎ、都市ガス小売価格が引き下げられたとしても、競争の乏しい地方でこうした首都圏と同じような引き下げが出るとは考えにくいです。

 関東や甲信越では地方自治体が持つ公営ガスの民間譲渡に向けた動きが見られるのに対し、導管のつながっていない地域では首都圏のような、地方自治体が持つ公営ガスの民間譲渡に向けた動きが出ていないのもこのためだと考えられます。

 都市ガスの市場開放は望ましいことですが、このままですと大都市の住民しかメリットを享受できず、都市ガス自由化の効果は半減してしまいます。導管網の整備など新規参入を後押しする方策を必要とするのがこれからのガス自由化です。

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